【開催レポート】大和田良ゼミ 関西クラス(日本写真学院・主催)第1回の様子

【開催レポート】大和田良ゼミ 関西クラス(日本写真学院・主催)第1回の様子

日本写真学院が主催する「写真家・大和田良ゼミ 関西クラス」の初回授業が3/19(土)12:00~、ソラリスにて開催されました。

このゼミでは最終的に今年9月にソラリスで開催する展示に向け、全5回の授業を通じて自由制作についてみんなでディスカッションをしたり、課題による技術修得を目指していくゼミです。今日はその様子をちょっとだけご紹介!

この日は初回ということでまずは自己紹介。その後、各参加者の作品を合評し、今後どう進めていくかのアドバイスと次回受講日までの個々への課題が大和田さんから提案されました。

さて、その合評ではどんな言葉が交わされたのでしょうか??以下、挙がった話題、気になった言葉を抜粋して掲載させて頂きます。「」内は大和田さんの発言(但し、会話の流れであったり、特定の写真を前にされてお話頂いた内容であることをご了承ください)。

大和田良ゼミin関西

■Nさん

(選りすぐってストーリーにしない、事実を淡々と綴る感じで作品を作ってきた)
(以前から取り組んでる、テーマというかプロジェクトというか、それが3種類ぐらいあって、これからどうしようかと)
(ひとつのテーマということではなく、大まかなプロジェクトとして捉えて、そこに向かって作品を作っていきたい)

「(物理的、時間的に難しいのもあるので)この1ヶ月はすすめられるものをすすめていく。どれかに絞るのは、1ヶ月だと難しいから3回目ぐらいでいいので。まだひとつに絞らなくてもいい。やれそうな部分から手をつけてみて。」

■Kさん

(このゼミで「モノをつくっていくこと」を進めていきたい。後からじわじわと見たくなるものを)
(何がとにかくおもしろいのか、自分でも分かっているつもりで分かっていない。自信がない)
(撮らなきゃいけないという縛りを自分でつけて撮ったものはやっぱりしんどい)

「前に見せてもらった時もそうだったが、技術的なことはもうOK。何が自分にとってブレイクスルーになるのか。」

「プリントは綺麗でいいけど、何となく『写っていない感じ』がある。余計なものがうまく写り込んでいる気がする。観察して丁寧に撮影するのではなく、写真が持ってる『写っちゃった感じ』がほしい。」

「森山大道さんはなんか写るような気がするといってばしゃばしゃ撮ってどんどん現像して。その写るような気っていうのは、要は気配のことで、その気配を掬いあげる作業はこれまでとは違うアプローチをする必要がある。」

「撮るにしても、意識的に不要なものを入れて撮ってみては。そうやって意識的に撮って、とにかくどんどん撮ってセレクトする、それを試してみる。『写って無さ』を逆手に取って作品にしている人の作品をみていくのもいい。」

■Tさん

(山や神社仏閣、霊場など信仰的なものに興味がある)

「被写体自体をちゃんと見て撮っている。一番、その場の力というか伝わるものといえば、全体というより一部分ディテールを切り取ったものがとても感じる。中距離から遠距離で、しかもディテールを伝えるのがTさんにとってキーワードとなるのでは。」

「情報になってないディテールというものを出していくといい。インスピレーションを感じた、重要なところにフォーカスする方がいい。写そうと思って撮っているもの、例えば人物撮影などとは違い、風景などはいろいろな事象が絡み合っているので、より濃密にフレーミングを考えていくのが今回Tさんにとって重要かも。」

「フレームの中全部に、自分が目標とするものが全部入れてしまうから説明的になる。より抽象化する作業を。自分が見ているものをより強調する作業を。わかってしまうことで画面を構成するテンションが抜け、吸引力がなくなってしまう。神秘さを感じつつ何かわからないものに、人は畏怖を抱く。」

■Sさん

(撮りたいものは工場や電線など。あと、光が入ってきれいなもの、整ったものを撮っている)
(人から『写真でできることをきちんとやりなさい』と言われたことがあり、それが分からなくて)

「きれいなものを撮りたいとはこの写真たちからは感じられない。複雑に絡まったものの方が写真としては良かった。こっちは撮ってる喜びが写っているけど、こっちはどちらかというと撮っとくかという感じ。写真を見ることが楽しみな人は、撮ってる喜びが写っているほうが嬉しい。」

「そこで造られてる造形が、写真にしてから発見するのがおもしろい。実際に目に見えてるものより、写真にすることによって発見されるもの、それを構成するものが複雑に絡み合ってて、それを見つけるのがおもしろい。」

「その人の感性に訴えかけられたものは、写真にしたらその精密性、しくみがわかる。元からきれいなものより、絡み合ってて複雑で、むしろ汚いものを撮っていくといいのでは。その方がシンプルに見えてくる。写真に撮ると、汚いものって思っているほど写らないんですよ。」

(スクエアで撮るとどうしても撮る時にファインダー上であれこれ考えてしまって。力強い写真を撮りたいから、一回スクエアをやめようかと。以前のように2:3で……)

「それでもいいですけど。スクエアでも難しいですけどね。あんまり考えないでバンバン撮っていく方がいい。」

「主題的なものを見つけたらそれを真ん中に撮る!写真の反射神経を鍛えるにはいい方法。今は構図を考えずにバンバン撮る、主体を真ん中に置く、それをしていきましょう。」

大和田良ゼミin関西

■Kさん

(好きな競馬を撮っている。競馬があまり人気がなくなってきてて、その復興を込めて)
(10年前に写るんですで撮ったものが未現像のままあったので、現像したらおもしろかったので持ってきました)

「写るんですで撮った競馬場、おもしろい。色かぶりもいい感じ。でも、今回はデジタルで撮っていくんですよね?」

(それを相談させてもらおうかと。あと、他に何かいいツールがあれば)

「写るんですでもいいけど、広角ばかりになるのが……」

(デジタルと写るんですの二つ使いでもいいかなと……)

「うーん。雰囲気に統一性がなくなるというか、バラバラになるから、どうだろ……。標準から望遠のズームができて、中古カメラで一番安いフイルムカメラで撮ってみるとか」

「デジタルカメラで撮っていくのであれば広角気味で撮っておいて後でトリミングするのも手。でもデジタルカメラって思っている以上に綺麗に撮れる。その場の空気感を撮るのであれば、あまり綺麗に撮れない方がいいと思う。あ、ピンホールは??それであんまり自分のイメージじゃないとすれば別の方法を。中古のフィルムカメラ、トイカメラ、デジタルであればピンホール、どれかでやってみましょうか。」

■Wさん

(石川在住で、写真を始めて1年も経たない素人です。21世紀美術館で先生と出会い、先生と仲良くなりたいとこのゼミに参加しました・笑)
(先生の著書の中に「この世界を灰色一色にしたらダメだ」みたいな事が書かれていて、自分も子どもがいるんですけど、同じ考えで)
(個人で飲食店をしているため、どこかに撮りに行くことができないので、身近な場所のスナップショットを撮っていきたいなと)

「ここで感じたものが写っているのが増えていくといい。この写真がいいと思った理由とか、そういうのが増えていくと、写真にした時に、ああなるほどそういうことなのか、と気付く。」

「撮っている時は何がいいのか分からない。撮っているテーマも分からない。その状態のままセレクトしていく。何か気になるものから撮って、セレクトして、集めていく。撮る理由や何がいいのか分からなくても。」

「どこでもいい。写真にした時に現れるおもしろさ。いろんなところに写真になるものはあって。Wさんに一番必要なのはとにかく大量に撮る、ラフに撮る。そして最終的にセレクトする。セレクトで作家のオリジナリティが出る。作品の個性が出る。」

「要は見落とさなきゃいい。ちゃんと撮らない、実験的な撮影、おもしろがってバンバン撮って。まずは1ヶ月続けて、セレクトして、また大量に撮って、セレクトして。」

■Sさん

(高知からゼミに参加。7年前に先生とお会いしてからいろんなイベントに参加している。高知で作家同士で展示するスペースを持っている)
(行き詰まっててどうしようかと。自分の見るものの興味を知りたい)
(撮った写真から絵を描きたい画家さんとのコラボも予定)
(4~5月にストックホルムにて滞在制作を予定している)
(どこかに身を置いて制作するのではなく日常生活を撮りたい)

「Sさんの感覚は背景に使っている淡い色やグラデーション。肉眼ではこうは見えないので。その辺がSさんの写真の色彩。独特な透明感を持っていると思う。これがSさんの一部分というかエッセンスになっている。」

「元々、Sさんが写真に感じていた写真の綺麗さが、写真にした時の透明感、にじみとなって出ている。それが今まで背景に出ていたものが、主体主題となって出てくれば、元々持っていた感性がより濃くなると思う。」

「撮ってる距離感や構図などは、他の人とある程度同じような感じになるもの。背景の色の使い方は個々によって違う。個性が出る。感性が宿るというか。」

「行き詰まった感じになるとすれば、元々Sさんが持ってた色の感じが使えてないなとなった時になるのでは。色に関して考えてみれば。色だけを撮るのではなく、写真にした時に気持ちいいか、そこに焦点を当てた制作を。」

合評終了後は、大和田さんからオススメの書籍をご紹介いただき、次回に向けての課題が出されました。次回のゼミは4月16日(土)。一ヶ月ですが、皆さまの写真をわたしも楽しみにしています!

ゼミ終了後は交流会も兼ねてご近所のカフェへ行った後、写真集のたくさんある古本屋さんへ足を伸ばしたりしつつ解散。それでは皆さま、また来月どうぞ宜しくお願いいたします!


最終更新日:16年10月9日(日)