【開催レポート】尾仲浩二さんによるワークショップ「撮影プリントの話 + 作品講評」の様子

【開催レポート】尾仲浩二さんによるワークショップ「撮影プリントの話 + 作品講評」の様子

ソラリスでは企画展として2015年10月18日(日)まで、尾仲浩二 写真展「Lucky Trip Again」を開催中です。

その会期中イベントとして10/11(日)、実際に尾仲さんが暗室で使っている道具やテストピース、プリントを見て、撮影からプリントまでの話をうかがう「撮影プリントの話」と、参加者のプリントを見てアドバイスなどいただける「作品講評」を開催いたしました。

その様子をちょっとだけご紹介します。

尾仲浩二 onaka koji

まずは、プロジェクターを使って写真を見ながら、尾仲さんの最近の活動をお話し頂きました。ドイツ、パリフォトなど海外での様子から、国内での活動のお話、ドイツで出版される新作写真集「snakewood」に向けての作品まで多岐にわたる内容!旅することの魅力についてお話されてる尾仲さんの口からでた「道に迷ってるぐらいがやっぱ旅は面白いなぁ」という言葉が強く印象に残っています。

暗室の話では、細部まで写真で見せてもらいながら、どんな道具を使っているのかや、細かい部屋の工夫、作業ごとのポイント、心がけてらっしゃることなどをお聞かせいただきました。暗室はみんなそれぞれの工夫があるものですが、なかなか知る機会のない部分。わたしも前のめりになりながらプロジェクターに釘付けに。その話の流れから、写真集を作る際の作業のお話など、普段写真集からだけでは知りえないこともお聞かせ頂いたり大ボリュームの時間でした。

最後はちょっとオマケを、、とおっしゃって流してくださったのは、普段携帯で撮っているという写真に音楽の付いたスライドショー!「でもこの辺とLUCKY CATとかの境目はどこかというと、多分ないと思うんですけど」とおっしゃって始まったスライドショーは音楽も尾仲さんによるもの。

尾仲浩二 onaka koji

それだけでは終わりません。電気を点けたあとは暗室で実際に使っている道具も登場し、さらに尾仲さんが持ってきてくださった黒い箱を開けるとそこには、プリント、そしてテストピースやコンタクトプリントの山!「置いとくんで手に取ってみてもらっていいですよ」という言葉に目の色の変わるわたし。それらを手に取って見ながら、どんな風に色を変化させていきながらプリントを仕上げているのかや、ネガ管理の工夫、参加者から寄せられる様々な質問にお答え頂きました。

尾仲浩二 onaka koji

最後に質問タイムもあり、旅についてや海外でのお話までそれぞれが気になっていることをさらに聞かせて頂いて「撮影プリントの話」は終了、と思ったその時、テストピースに夢中な参加者の方々に尾仲さんの口から「これは持って帰ってもらってもいいですよ」との言葉が。ふたたび目の色が変わってしまうわたし。

尾仲浩二 onaka koji

休憩をはさんで、続いては尾仲浩二さんによる「作品講評」です。今回はそのお話のなかで挙がった話題、気になった言葉を抜粋して掲載させていただきます。

「」内は尾仲さんの発言です。ところどころ会話の流れであったり、特定の写真を前にされてお話頂いた内容ですので、わかりにくいところもあるかもしれませんがご容赦ください。少しでも写真のヒントになれば嬉しく思います。

尾仲浩二 onaka koji

(撮影範囲について)「その範囲っていうのも、行政区分で分かれてるわけじゃないじゃないですか。例えば川の向こうは違う町だったりしても、よく川の向こうにあそびに行ってたりすれば、自分の町だしね。あんまりこうがっちり決めなくてもいいんじゃないかなって思うんですよね。まぁ、そうやって決めたほうがまとめやすいてのも確かなんですが。」

「こっちはすごく心情的に入り込みやすい写真だと思うんですよ、こっちは意外とクールに、写真やってない人が見たら何を撮ってんだかまったくわからない写真、これがその間くらいかなって思うんですよ。ちょっとなんか面白いものもありつつ、たしかにこれを撮ってる、これを撮ってるっていう。自分がどの辺を好きなのか、ですよね、きっと。撮る時にどこを意識するかで随分変わってくると思うんで。僕はこのへんがすごく好きですよ、すごい好きだけどはたしてそれがほんとうに自分のやりたいかどうかはわからない。」

尾仲浩二 onaka koji

(こういうWSはじめてでどういうふうに関連付けてもってきたらいいのかなって。。。特に深い意図があるわけじゃないんですけど)「全然問題ありません・笑。ぼくの写真も深い意図はないんで・笑。結局写真て興味をもったもの、自分が気になったものを撮ってくればいいんだと思うんですよ。そんな素晴らしい何かを撮らなきゃ写真として発表できないなんてことは、まったくないと思うんで。そういう意味ですごく色んな所に面白がってわかるのは見てる方も楽しいんですよ。」

「むしろ写真て、続けると、ああじゃなきゃいけない、こうじゃなきゃいけないみたいになっていって、どんどんつまんなくなってやめちゃうんですよ。ルールなんてないんで、まっすぐ撮らなきゃいけないとか、ぶれちゃいけないとか、ピントが合ってなきゃいけないとかなんてことはないんですよ。むしろそんな写真を撮るほうがいまは難しいですからね・笑。見たとおりに写らないのが写真の面白いとこなんで、そこでどうしたら思ったように撮れるんだろうなって思わないほうがいいと思うんだよね。」

「観光地的なとこを入れるのか入れないのかとかで変わってくると思いますね、どの立場で自分が作るのかというところでしょうね。旅好き的な目線にするのか、土着の何かに興味があってやってるのかとか。」

尾仲浩二 onaka koji

「たとえば、どういうとこに興味があるかですね。誰かに見せるために撮るのか、紹介のために撮るのか、自分のプライベートな目でモノを撮りたいのかで撮り方が変わってくると思うんですよ。どの位置から自分が見たいかで大きく変わると思うんですよね。」

「記念写真で構わないと思うんです。記念写真は作品にならないかというとそんなこと全然ないんで。どっかびくびくして撮ってる感じがするんで、コミュニケーションとって撮られると全然もっと強いものが撮れるんじゃないかな。」

「白黒に関してはコントロールですね。白いとこと黒いとこの。トーンの話むずかしいと思うんですけど、いい写真をいっぱい見ると目が覚えますからまずそれをやられるといいと思いますね。単に白・黒とカラーて言うことじゃないんで、白黒の世界てすごく深いんですよ。どういうトーンが自分は好きなのかを見て、自分が作りたいモノクロのトーンをイメージできるようになるともっとよくなると思います。」

尾仲浩二 onaka koji

「写真的に美しいとかかっこいいとかてことじゃなくて、この人の目は変な目を持っているということ、それが大切なんだよね。なんでこれ撮るんだよって・笑。人が撮らないものを撮る、人が気にならないものが気になるっていうことがひとつの写真のうえでの才能だから、そっちをやっぱ延ばした方がいいと思うんだよね。私は普通だと思ってるのに人が見るとおかしい、そこがやっぱ面白いんだよ。」

「変なものを探してくるって訳じゃないと思うんですよ、変なものは誰が見ても変だからさ、それをやっぱり写真にしたときに面白いかどうか。」

尾仲浩二 onaka koji

「別にこんな順番絶対ある訳じゃないんでどうにでもなるんですけど、(中略)これで終わることもできますよ。これで終わるともっとその先の問題が続くんですよ。もっと、深い思いを持って撮ってる訳でもないという、その辺を出したいのでこれを選んだんですね。これで終わるともっと深刻になっちゃうわけですよ。重くしたくないですね、これくらいがちょうどいいのかなって。」

というわけで、濃厚な1日となった尾仲さんによるワークショップ。「写真はこうしなきゃいけないとか決まりはないんで、自分を信じてやればいいんで」という言葉で締めくくられた作品講評は、まさに写真はこうじゃなきゃいけないというモノサシからどんどん解き放たれ、もっと楽しんでやろうという柔らかい気持ちが湧いてくる時間でした。そういった中から尾仲さんの作品が生まれてくるのかなと想像しました。

ご参加頂きました皆さま、そして尾仲浩二さん、本当にありがとうございました!

ソラリスでは10月18日(日)まで、ひきつづき企画展として、尾仲浩二 写真展「Lucky trip again」を開催中です。会場では作品のほか、多数の書籍取り扱いもしております。ぜひゆっくりとお楽しみください。


最終更新日:15年10月14日(水)