08 11月 【開催レポート】尾仲浩二「作品講評ワークショップ」の様子
ソラリスで3月に開催した、尾仲浩二 企画展「ネコとコージくん」。その最中に新型コロナが拡大しはじめ、残念ながら展覧会とともに開催予定だった「尾仲浩二 作品講評ワークショップ」は中止となりました。
でも、そのとき「落ち着いたらまた絶対やりましょう、絶対に行きますから」と言って下さった尾仲さん。
あれから半年経って先日の11/6(金)、あらためて尾仲浩二さんをお迎えして「作品講評ワークショップ」を開催することができました。本当に感謝感謝です。
密を避けて少人数で、その分濃密で贅沢な時間になりました!
今日は、そんな作品講評の様子をちょっとだけご紹介します。
今回は講評のなかで挙がった話題、気になった言葉を抜粋して掲載させていただきます。
「」内は尾仲さんの発言です。ところどころ会話の流れであったり、特定の写真を前にされてお話頂いた内容ですので、わかりにくいところもあるかもしれませんがご容赦ください。少しでも読む人にとって、写真のヒントになれば嬉しく思います。
まずは石川直樹さんのWSにも参加しているというTさんからスタート!
Tさん(お遍路の写真)
「どういう展示にするか、どういう本を作るかによって並べかたって全然違ってくると思うんですよ。いろんな組み方ができると思うんだよね。人に見せる時の条件でやっぱり選び方は変わってくると。ドキュメンタリー的なことをしたいのか、自分はこう感じたっていうこの辺の《道》の世界を作りたいのかで違ってくると思うんですよね。」
「組み合わせで写真って見え方が変わってくるので、この犬もいても良さそうだけど、ここにこの可愛い犬はいらないって思うんだよね。むしろこの手前ボケてるヤギがいたりとか影があるものものとかね、そういう世界を作れるかな。」
「この辺を並べちゃうとみんな撮るじゃない。説明的になっちゃうと、見る人が『ああ、お遍路の写真なんだな』って。そこで納得しちゃうと、なかなかそこから先を読んでもらえない、しっかり写真を見なくなっちゃうと思うんだよね。むしろこの人は何を撮ってんだろうって中からそれぞれ見る人が共通点を見つけて、自分なりに納得するから写真は面白いと思ってるんで。遍路を歩いたから遍路の説明をする必要はないと思うんだよね。」
(自分の取り方の癖で、中央に日の丸的に置いてしまうのですが、どう思われますか)「あんまりそんなに気にならなかったなぁ。写真てだいたい真ん中にあるんじゃない?あえて崩してとかもあるけど、あんまり縛られない方がいいと思いますよ。もしあるとしたら、すごく平面的なんだよね、奥行きがあまりない写真が多いと思いますね。撮るときにそこに気がいっちゃって、余計なものを画面に入れないんだろうなって。引き算もやりすぎると写真て説明的になりすぎちゃうから、もっとスナップ的に、構図を決める前にシャッターを切っちゃっていいと思うんですよね。整理すると写真ってわかりやすくなりすぎちゃって、うーん。」
(強い写真と弱い写真の違いってどんなですか?)「いい写真と強い写真て言うのもまた違いますよね。この写真て強いと思いますよ。違和感あるけど、このヤツデとこの人といい加減なこの構図が(笑)。何を撮ったんだ!?って。この手の写真がもっと確信的にあったら全然違うものが組めるよね。意識的にこれをやろうと思うとすごく難しいんだろうけど、きっとそういう写真が紛れ込んでるんですよ。そういうのって意識してやればやるほど、つまらなくなっていくんで、写真を長くやってて迷路に迷い込む人はだいたいこういうところから入っていって、普通の写真が撮れなくなっちゃうんですよ。それが写真だって思っちゃうから。」
「写真て現実にあるものしか撮れない訳で、それを写していく訳ですよ。なんでもないものですよ、ほとんど。それを組み合わせることでなんでもないものが変なものに見えてくるところが面白いところですよね、きっとね。その辺の加減はもうほんとにもう自分で決めるしかないもんね、どのあたりがやりたいかだもんね。」
(色について意識したほうがいいこととかってありますか?)「自分がどういう色が好きかだよね、モノクロもそうだけど好きなトーンがあってまずそれをやってみるわけで。こんな色じゃなきゃダメとか、普通にプリントしてるだけじゃダメだよなんて思わないですよ。僕もネガカラーでやってるときに、自分の好きな色に焼いてるだけで、伸ばし機も薬も普通の市販のものを使ってるだけなんで。モノクロの時に覆い焼きしたり、焼き込みしたりそういうことの延長線なんで。むしろ今度のやつ《写真集「すこし色あせた旅」》みたいにネガカラーも色が変わっちゃってまともな色は出ないんだけど、色は出ないなりに自分が面白ければいいなあっていう。こうじゃないといけないってことはないんで。」
(写真に余白をつけた方が良いでしょうか)「ま、見え方は変わると思うんですよ。ただそれは見え方の問題なので、作品自体がそこで変わるわけではないと思いますよね。余白ではないけどサイズってすごく大切なので、特に写真ていくらでも大きくなったり小さくなったりできちゃうけど、自分のイメージサイズってのを持ってた方がいいと思いますね。大きさで写真て見え方変わってきちゃうんで。大きけりゃいいとも思わないしね、小さい方がいい写真もあると思うし。」
Tさん(2枚の写真)
(数が少ないんですけど、、《二枚並べる》)「えっ!少ない(笑)!パッと見て、要するにプリントの話をすればネガがアンダーなんだろうなって思います。アンダーだとどうしてもこういうトーンになっちゃう。ネガカラーって僕はほぼ一段オーバーで撮ります。アンダーになると途端にシャドー部が締まらなくなっちゃうんで。」
(キャプションはつけなくてもいいかなって思うんですけど、)「キャプションてのはタイトルとかじゃなくて説明ってこと?それはもう考え方ですよね、その写真がいつどこで撮ったかがあるからこそ見えてくる写真もあるし、そういうことはどうでもいいやって思うのか。基本的にはなくてもいいやって思いながら本作ってるんですけど、どこで撮ったのかいつも聞かれるから先に載せてますけど(笑)、一点ごとには絶対載せないですね。時間とか場所が見えることで納得しちゃうところがあるんですよ、どこで撮ったのか、いつ撮ったのか、どういうシチュエーションなのかとか何もヒントがなくて見てる方が面白いと思うんですよ、一生懸命写真に対して考えるから。それぞれ勝手な想像して、一応納得してってそこが面白いところだと思うんですよ。」
「例えば100年くらい経って、オーストラリアの人が僕の写真見たら、100年くらい前の日本の写真に過ぎないじゃないかって思うんですよ。そうやって考えれば日本の地名をいちいち書いてるのは、あんまり意味ないなって僕は思ってます。ヨーロッパの人のデータ見てもあんまわかんないし、向こうの人もこれどこで撮ったのかって聞かないですしね。データが記録として必要な時もあるとは思いますけど、なくていい写真もいっぱいあると思うんです。
Nさん(夜の町)
(最初は手持ちでやってたんですが、最近は三脚を立てて、)「どうですか、夜はもう撮りつくしたなぁって感はあります?だんだん撮れちゃうじゃん、だいたいわかってくるとさ。それでいつまでやるかとか、どうやって終わらせるかっていうことが出てくるんだよね。一旦展示をやるとか、小さい本作ってみるとか。あとシチュエーションが似てるんで、どっちを選ぶっていう作業をしていくことだよね。猫も何度も出てくるからせめて二、三匹までとかにしていくとか、むしろ夜の猫だけ集めたみたいなのをやるとかね。ものの面白さもあるし、静寂感もあるし、いろんな目が入ってるんで、これをどういう形で自分がまとめたいかっていうことだと思うんですね。」
「すごい静かな世界なんだよね、で、ものがちゃんと存在してて。こういうのは選び方なんで、自分で絞り込んでいくのはすごい難しいんですけど、正解はひとつじゃないんで、例えば20枚組むんだっていうゲームをするといいよね。いろんな組み合わせができるし、こっちに入ったからといって、こっちに入らないってことはないわけで。例えば編集者に任せればセンスよく作ってくれるけど、それははたして自分の作品なのかっていうことですよ。写真を撮る時もなんでも撮れる中から自分が撮ってきてプリントしてるわけだから、そこから先、自分が何を見せたいかがわかるのは自分だけだから、そこですよね。自分で決めていくっていう、一番大切なところってそこだと思うんですよ。写真って押せば写っちゃうからいくらでも撮れるのよ、だから限りなく撮るんだじゃなくて、やっぱりどこかで自分は何をやっているかをわかってやるのがいいと思います。それがわかったらまた次のことをやった方が面白いと思うんだよ。専門を作っちゃうと撮る方は楽なのよ、でもはたしてそれが本人は面白いかどうかってことだよね。」
「色がかっこよくなるじゃない?そこはもちろん面白いんだろうけど、しっかりものを見てる目線の方が面白いんだよね、しっかり見てるなって思うもんね。」
(一番悩むのがこれを自分でセレクトして、その時に言葉が出てこないっていうか、まとめた時にどう説明するかっていう)「あのー、ステートメントを書けって言われるんだけど、そこにあんまりこだわる必要ないと思うんですよ、写真なんだから。コンテストとかね、そういうのってよく言われたりするんだけど、展示やるのにそんなわざわざ書く必要ないもんね。」
Kさん(数年前まで住んでた東京の景色)
「《並べ替えてみて》ちょっと今ロマンチックなイメージで選んでみました。」
(フィルムで撮ってて、結構場所とか忘れちゃうんですけどどうしてるんですか?)「僕、結構記憶力いいんですよ(笑)。あとコンタクトプリントとってるんで、そこに書いてるんですよ、いつどこで撮ったかって。コンタクトはとってます?」
(いえ、)「それはとった方がいいですよ。やっぱネガじゃわかんないんですよ。コンタクトシート作っちゃえば、ろくろくならほとんど見えちゃうしね。それとコマ間の露出の差がわかるからプリントする時にやりやすいんです。これが標準だとしたら、隣の方はアンダーだなとかわかるからちょっと秒数調整したりね。」
(モノクロもオーバーで撮られますか?)「そうですね、だいたいISO400のフィルムだったら320くらいにセットして撮ってましたね。せっかくローライで撮ってるんだったらぜひ自分でプリントもしてみてください。今まで暗室やってことは?」
(やったことはあるんですけど、そんなに極めてとかでは)「極めなくたっていいんだよ(笑)、焼けばもうそれが面白いから。アクが強くなくて好感持って見れる写真だよね、距離感がいいですよね。」
Eさん(ハーフカメラ)
(鳥取と富山に二泊三日で、フィルム代が高くなって、いっぱい撮りたいのでハーフで。できたらなんでも撮りたいなっていう最近ちょっと思うことで)「こういう全く違うものが隣り合うのが面白いね。写真てどうしても偶然性が入ってくるものだから、隣のコマにたまたまいるっていうのが面白いですよ。この辺の淡い感じが好きなんですね」
(撮る時にオーバー気味に撮ってますね)「面白いよね、なかなかこういう撮らないものにしっかり構えるとね、ほんといいよね」
(こっちは自転車でつくばを回った時の、)「ほんと気楽に撮ってる感が伝わってきていいなぁ、写真は気楽に撮りたいものですよ。これとか絶対伸ばさないもんね(笑)。これが一枚一枚プリントして並べるとやっぱそこに作為が出てくるしさ、そうじゃないところがきっと面白いんだよね。色もこれでいいですよ、この写真を見せられて何歳くらいのどんな人が撮ったのか全然わかんないですね、女子高生って言われたらそんな感じもするよね(笑)」
(おじいさんですけどね(笑))「いやいや、この辺とかね。カラーってやっぱこの色が出るから面白いんだよね。いやー、楽しいです。」
「最終的にはこういう4枚も面白いんじゃないかな、ペア感が強く出ると思う。こういうペアを決めていくのが面白いと思うんだよね。展示に合わせて、冊子も作って見たらどうですか。」
橋本
(写真始めて1週間ぐらいの人の感じで、)「なかなかそうなれないからね、やり方だよね。なんでもさぁ、面白いなぁと思えば撮ればいいんだよつってわかってても撮れないのが写真で、でもそういうハーフカメラとか新しいおもちゃを持つとやるんだよね。これカメラはなに使ったんですか」
(F3で、)「これF3なんだ(笑)なかなかF3でこう撮るのは難しいね(笑)。」
(これ展示するかどうか悩んだんですけど、)「これチャレンジだよね(笑)。この辺はうまさが見えるから外そう(笑)、この6枚でかな。そういう気持ちで撮るのが難しいよ、これ撮れないもん。写真ってなんなんでしょうね。全然橋本君ぽくなくていいと思います。F3が泣くよね(笑)、絶対レンジファインダーで外れちゃった感じだもんね。」
(または、ど真ん中構図で)「でも時々そういうのやった方がいいなぁってね。写真って続けてるとどんどん上手になっちゃうからね。」
というわけで濃密な時間になった作品講評ワークショップ。参加者の方には、尾仲さんからオマケとして世界各地への旅を集めた冊子「GO TO」をプレゼントいただきました。ありがとうございます!その後は写真集サイン会なども。参加者の皆さま、尾仲さん、長い時間まことにありがとうございました!
ソラリスでは11/6(金)から11/17(火)までソラリスのショップコーナーにて、尾仲浩二さんのミニ写真展『すこし色あせた旅』を開催しております(月曜休廊)。写真集の原稿プリント6点展示しているほか、写真集、ポスター、カレンダーなどずらり!今なら購入特典として世界各地の旅をまとめた『Go To』がつきますヨ!ぜひゆっくりとお楽しみください。
また尾仲浩二 写真展「すこし色あせた旅」が大阪・豊中のgallery 176にて、開催中です。11/20(金)からは、三重県・津市のgallery0369に巡回もされます。
ぜひ合わせてご覧ください。
尾仲浩二 写真展「すこし色あせた旅」
会期:2020年11月6日(金)〜11月17日(火) 13:00〜19:00 ※11月11日(水)、12日(木)休廊
会場:gallery 176(ギャラリー イナロク)
大阪府豊中市服部元町1-6-1/阪急宝塚線 服部天神駅(梅田から11分)下車 徒歩1分
最終更新日:20年11月8日(日)
投稿者:solaris