黒田和男 写真展

関西の芸術家たちは、戦前から優れた写真や詩を多く遺してきた。戦死した私の祖父もその一人であった。今を生きる私は、失われつつある先人の思想や作品を、現代の技法を用いて再構築できるのかを試みている。
本展は、通勤途中に摘んだ草花や日用品、そして先人が遺した言葉をモチーフとした作品で構成される。それらはどこにでもあるささやかな断片であり、かつて誰かが辿った思考の跡に他ならない。
印画紙の上に直接対象を置いて光をあてるフォトグラムやルーメンプリント。レンズを介さないこれらの技法は、冷徹に、孤独に、そして正確に対象を定着させる。光の照射や露光の揺らぎ、対象との距離によって、物質はその重みを失い、純粋な輝度の連続へと変容していく。階調が交差し、収束する時、平面の上には立体的な奥行きを孕んだ視覚的な空間が立ち上がる。それは単なる記録に留まらず、光と影が幾重にも響き合うポリフォニーとなり、静寂の中に豊かな余韻をもたらす。ヴィンテージの印画紙に含まれる銀は、モチーフに鉱物のような質感を与え、不可視の透明性をそこに留める。
本展の「Solitude」が指す孤独とは、寂しさではなく、日常の喧騒を離れ自分自身に問いかけるための時間を意味している。作為を削ぎ落とし、赤い灯の下で像の現出を待つ時間は、思想や哲学、そして過去との対話の源泉となる。この静かな孤独こそが必要だと思う。
京都市在住。オリジナルと複製、真実と架空、職人性と偶然性といった写真のもつ矛盾を様々な技法で掬い取って発表している。
2023 大阪 gallery solaris 「gift」
2019 大阪 リコーイメージングスクエア大阪「re collection」
2019 東京 リコーイメージングスクエア新宿「re collection」
2018 大阪 gallery solaris 「cut flowers」
2019 金沢 serif s(セイタロウデザイン金沢)「re birth」
2019 大阪 gallery solaris 「re birth」
2022 Tokyo international Foto Awards 金賞
2021 APAアワード2022 入選
2020 御苗場 レビュアー賞(パーパン・シリマ)
2016 芦屋写真協会写真展 準グランプリ(兵庫県立美術館展示)
2015 第9回Salon Daguerre公募展 入選
2015 芦屋写真協会写真展 佳作