本展はひとりの友人に焦点を当てています。思春期に深いトラウマを持ちながら、音楽を拠り所に生き繋いできた彼。生きる葛藤を愚直に創作へと昇華するさまに共感し、８年前から折に触れ撮影してきました。その姿を、私のライフワークである創作的なモノクロ写真で表現しています。

作品は全てフィルムで撮影し、様々な表現方法を組み合わせて暗室作業で焼き付けます。それらは、社会の”いま”を伝える英字新聞との合成や、いのちの断片を残すフォトグラム（物体の影を直接印画紙上に写しとる技法）など、暗室での手作業による偶然性も取り込んだ創作です。複層的な写真表現は、私自身が人間社会の清濁を受け止め、美醜両面を内包した生の煌めきを見つめる手段だと思っています。

それらの創作的写真を軸に、ポートレート、心象風景を写したスナップ等を組み合わせ、「吹き溜まりの種」と題したシリーズとして発表します。そのほか、フィルムそのものを素材として使用したアクセサリーやグッズ等の販売も行います。

■山形紗織 略歴

1990年　岡山県に生まれる
2010年　銀塩モノクロプリントの美しさに魅了され暗室作業を始める
2016年　個展｢THE LAST EXIT TO -｣　(上之町會舘2階ホール／岡山)
2019年　二会場同時個展｢subliminal children｣、｢at the liminal city｣（上之町會舘2階ホール／岡山、珈琲屋ラヴィアンカフヱ／岡山）
2022年　小規模個展｢暴露 – EXPOSED –｣　(珈琲屋ラヴィアンカフヱ／岡山)
2023年　二人展「銀のいと」（シェアスペースlulumalu／岡山）