©︎地田哲司
©︎地田哲司
©︎Fumi.
Fumi.×地田哲司 二人展
「街からの便り」
2024年10月1日(火)〜10月6日(日) 11:00〜19:00
作家在廊予定
10/4(金)、10/5(土)、10/6(日)
スマホで瞬時にデータを送信できるこの時代に、写真を絵葉書にして送りあう二人。
わざわざ紙にプリントし、何日もかけてようやく手元に届く写真。それは、とても贅沢なものではないだろうか。
バックパッカーのTと海辺に住む女性写真家Fは、そんなやりとりを数年来続けている。
Tは「外国の見知らぬ街の日常」を、Fは「海辺の街の日常」を絵葉書にして、お互いに送りあう。
写真展「街からの便り」は、そんな二人の絵葉書のやりとりから生まれた物語だ。
世界の隅々まで旅する謎の旅人、T。ひょんなことから、海辺の街で活動する女性写真家Fと出会った。大阪の居酒屋でビールを飲みながら話すうちに、Fが海辺の街の風景や人々の人々の笑顔やしぐさ、そして昨日とよく似た今日の街に感じる微妙な空気感の違いを捉え、その非日常をカメラに収めていることを知った。Fはそんなことを話しながら、いたずらっぽい瞳でこちらを見つめ、ジョッキを空けるTに向かってシャッターを切った。
数日間の大阪滞在を終え、僕は再び旅立つことにした。街こそが人間の本質を無防備にさらけ出す場所であり、歴史の1ページを垣間見ることができる場所だと気づいた。それを記録しないのは、とてももったいないことだ。バックパックを背負って街を歩きながら、嬉しそうにファインダーを覗くFの姿が頭に浮かぶ。その後、Tもカメラと交換レンズを買い揃え、街の様子を撮影し始めた。気に入ったカットが撮れたときは、Fに絵葉書を送るようにしている。次の街を指定すると、Fも彼に絵葉書を送ってくれる。
スマホのボタン一つで世界中にデジタルデータを送信できる時代に、時代錯誤だと人は言うかもしれない。しかし、写真は紙で見るものだと僕たちは思っている。紙こそが、その場の空気感や撮影時の想いを込めることができる気がするからだ。それが本当かどうか、僕たちの交わした「街からのたより」を見て判断してもらいたい。
Tから届く葉書の写真は、旅先の街の日常風景が多い。Tは、相手に壁を感じさせない彼独特の人なつこさで、今いる街にも馴染んでいるのだろう。
私は、住まいのある海辺の街やその日常、気になったものをモノクロフィルムで撮影し、自分でプリントしている。プリント作業では、撮影した時のことを思い出しながら、露光時間を細かく調整して色の濃淡を整える。例えば、春先の日差しが降りそそぐ暖かい朝で、メジロがうるさいくらい鳴いていた、といったようなことだ。芸術作品には魂が宿るとよく言われるが、写真も同じだと思う。露光によって白紙の印画紙にぼうっと画像が浮かび上がってくるその瞬間、私の想いとその光景は、一つの作品の中に統合される。
Tはその話にとても興味を持ったようだった。
数日後、Tから連絡があった。私と別れた次の日に、彼はさっそくカメラを買ったらしい。そして、撮った写真を葉書にして私に送ろうと思っていると意気込んでいた。それからしばらくしてTのことを忘れかけたある日、本当に葉書が届いたのは驚きだった。スマホがあれば一瞬で写真を共有できるこの時代に、わざわざ紙にプリントし、何日もかけてようやく手元に届く写真。それは、とても贅沢なものではないだろうか?しばらく葉書を眺めた後、私は本棚のアルバムを何冊か手に取った。もちろん、彼に送る葉書の写真を選ぶためだ。葉書を受け取ったTの顔を想像して、愉快になった。
私が住んでいる海辺の街の日常と、Tが訪れた外国の見知らぬ街の日常。それぞれの街を旅した気持ちになってもらえたなら、私たちもうれしく思う。
愛知県出身。愛知県在住。
学生時代に北海道1周の旅を始め、卒業旅行をキッカケに海外への旅に興味が湧き、現在に至る。その旅の過程で写真の世界にも興味を持ち本格的な撮影を開始。
有名なところも出かけるが、どちらかというとあまり人が訪れない場所や日常的な場所に心を惹かれ、そのカテゴリーを活動拠点にして撮影をしている。
フォトマスター検定準1級所持。
Instagramでも旅の様子を投稿することも多数あり。#ちだてつし探検隊たまに依頼を受けて写真撮影をする場合あり
(その他)
著書:バイク小説『フル・スロットル』『フル・スロットル2』*表紙は自身で撮影、デザイン
広島県在住。小学4年生の時にもらったポストカードがきっかけで、写真に興味を持つ。
社会人になって写真を撮り始め、2014年に暗室教室へ入ったのを機にモノクロフィルムでの撮影を始める。10年たった今でも、手焼きプリントの面白さ、奥深さにハマっている。
その時感じた「何か」をどうフィルムに残すか、試行錯誤の日々。