「バーベキューソースが欲しい」──ある時、しゃぶしゃぶ店で外国人観光客がそう言って店員を困らせていました。

よく考えれば「しゃぶしゃぶはポン酢かごまだれで食べるもの」というのは日本人にとっての常識であって、その外国人にしてみれば「肉はバーベキューソースで食べた方が旨い」素直にそう思ったゆえの行動だったのでしょう。

日本の常識にとらわれず、自由な感性で旅を満喫する外国人観光客の姿をマネキンに投影してみたら、今まで誰も挑戦したことのない世界が表現できるかもしれない──

それが創作のきっかけでした。

独創的かつ懸命に日本に擬態しようとするマネキン達を通じて、柔軟な心で異文化を受け入れるヒントを見つけられたら──なんてもっともらしいテーマを持ってはじめたものの、やがて彼らは観光だけに飽き足らず、過激に破天荒に常識と非常識の境界を飛び回りはじめました。

自由気ままな“彼ら”の旅路を呆気に取られたり首を傾げたりしながら追体験することで、日常のモヤモヤを想像の世界に昇華させる楽しみを見つけてもらえればマネキン達も喜びます。

池田 貴子